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ドラマ。

職場は、ドラマである。

自分の身分が社長だろうとアルバイトだろうと関係ない。日夜その監獄にとらわれる人間模様は、日々日常がドラマなのである。別に朝来てみたら会社の役員が殺されていたとか、帳簿整理をしていたら不正経理の巨大な闇を発見してしまったとかそういう事件があるわけじゃない。だが、確かにそこにはドラマがある。

豊さんは世間一般でSEと呼ばれる職業ではありますが、その実任される仕事は社内システムの開発で、もそっと具体的に言うと経理関係のシステムで、仕組みを理解するためだと経理の仕事を手伝わされて、ここ最近というか会社に入ってからSEなのか事務なのか分からない微妙な立ち位置にいるわけなんですが、事務なら当然、SEだったとしても社内システムの開発ですから、外出の機会なんてどっかのセミナーに参加するだとか、上司が階段から足踏みはず下から病院に付き添ってくれだとかそういうレベルでしかないのですよ。

憧れがないわけではないのです。豊さんだって客先に行ってきます、と言いながらパチンコ店に行ってわしょーいしたいです。それで財布の中をすっからかんにして若干涙目になって社内に帰ってきて「どうした客先ともめたか」なんていわれて初めて客先のことを思い出してあわてて電話とかしたいです。

でもですね、社内にいることによって目撃できる数々の名場面、それこそドラマと言っても過言ではない事件も少なからず存在するんです。

豊さんの職場の席はその微妙な立ち位置もあいまって、非常に微妙な位置に存在します。普通ね、新入社員って出入り口の近くに席を置かれるんですよ。人が来たらそれがたとえ指名手配犯だろうが「お疲れ様です!」ってコンマ何秒かのウチに席を立って腰から頭を下げて挨拶しなければなりませんよみたいな呪いが蔓延しているもんですから。

まあ、豊さんにはその呪いは通用しなかったらしく、入社初日で霧散してしまったのですが、どうにもそれが気に入らなかったのか、ようし席がえだとばかりに移動させられた先は何故か取締役の斜め前の席。

ちょっと待ってくれよハニー。いくらなんでもこれはないんじゃないのかい?

そもそもですね、取締役なんていうラスボスクラスの人間が普通に島中にいるのはおかしい話でしてね。普通はそこに部長とか課長が座ってる席にですよ、どーんとラスボスが構えているのはおかしい。町の周りでスライムを陵辱してたらいきなり竜王が現れて世界の半分をお前にやろうとか言われるレベルでおかしい。というかそんな状況になったら流石の勇者もはいを選ぶと思うんだ。ちなみに豊さんはどんな状況でもはいを選ぶと思う。

そんなこんなな状況ですから、仕事中にいろいろ相応しくないサイトとかを覘きに行くのも一苦労。微妙にディスプレイの向きを変えてみたり、妙に肩を張ったような姿勢で周囲からの視線をブロックしながら、仕事をしていたんですよ。してたんですってば。文句あるのかこのヤロー。

そんな息詰まる攻防が繰り広げられていたある日、豊さんがいつものように人妻のみだらな午後を赤裸々につづった垂涎モノのページを堪能していた昼下がりに、背後から悲鳴が聞こえました。

やばいみられたかうわぁとかなりな勢いで焦って、素早く証拠隠滅の操作を実行したのですが、続く罵倒の言葉が降りかかってこない。おいおいコイツはどうしたことだ、まさか放置プレイってか。それとも気絶してやがるのか、コイツはとんだベイビーがいたもんだ。って感じで咥えタバコを吸殻満載の灰皿に突き立てながらハードボイルドに振り返ると、背中合わせのヤツがPCの画面を前に凍り付いていました。

彼、U君と言うんですが、事務系の癖に典型的な理系男子でして、なんかもうデフォルトで死相が漂っていて、彼の周りのデスクにはうっすら霧がかかっているような気がして、彼のデスクに座ったが最後、行ってははいけない世界に旅立てるんじゃないかってぐらいモヤシ系男子。ぶっちゃけ豊さんよりもかなり偉い立場の人なんですが、ヤクルトのおばちゃんの存在感にかき消されるような人なのです。

そのU君が何故かPCの前で呆然としている。ははぁ成程さっきの悲鳴はU君か。一体何をしてるんだまた上書き保存せずにファイルを閉じたのかとひょいと背後からディスプレイを見れば。

そこは異国であった。

トンネルを抜けたら雪国だったとかの騒ぎじゃないですよ。ディスプレイを見たらそこは異国ですからね。確かにPCは国同士の距離をゼロに等しいものにしました。ですが、それとこれとはまた別の話なんだと思います。人は他者を認識することによって人なりえるのです。人と人が分かり合える平和な世界とか言ってますけどね、アレは危険ですよ。人と人が完全に分かり合ってしまったら、自我融合とかいうエセ人類補完計画が発動しちゃって人と人が融合しちゃうんですよおー怖い。

ちっとも現状の説明をしてないので話を戻すと、要するに文字化けしてたんですよね。日本語と中国語と英語と記号が織り成す夢のコラボレーション。別にどってことないじゃんと文字化けした文字を読み進めて行き、なんか面白い文字列ないかなーと宝探し気分で遊ぶ豊さんを尻目に、U君は恐れ戦いています。ウイルスだーもう終わったー! みたいな。

はっきり言って終わってるというか、既に雰囲気としては人生のロスタイムを満喫中といっても過言ではないレベルの空気を四六時中撒き散らしてるじゃないですかとは口が裂けてもいえない。そんなことを言ったら豊さんの社会人生活がロスタイムの突入してしまう。それだけは避けなければならない。

話を聞けばメールを開いた瞬間に一瞬にして文字化けが発生したと。しかもなんか添付ファイルがついていると。これはもう完全に噂に聞く「怪しいメールを開いたらウィルス感染してしまった」状態だと。

コイツは一大事だ。うわぁどうしようと、その部署の他の人間も集まってきてですね、仮にAさんとAAさんとしましょうか。別にサイズの話じゃないですよ? ホントですよ? 大体AとAAじゃほとんど見分けつかないじゃないですかいやだなぁ。そもそも豊さんは胸の大きさなんかで女性を見たりしません。大事な要素であるというのは認めますが、大きけりゃいいってもんじゃないと思います。

で、二人がU君に事情聴取を開始するんですよ。

「何でこんなことになったの!」
「いや、自分でも何がなんだか…」

いやいや女性は強いですね。U君押されっぱなし。気の毒なぐらい狼狽していて、下手したらこのまま霧散するんじゃないかという勢いです。

「どーせ勤務時間中にいかがわしいサイト見ててそんなことになったんでしょ」
「そんな!」

いやいやそれは言いすぎでしょう。そりゃね、U君だってそういう欲求は当然あるでしょう。人生のロスタイムを満喫中だとしても、男として生まれた以上はそういう欲求はあってしかるべきだと思うのですよ。そしてそれが例え勤務時間中だとしてもね、抑えられない欲求は当然の如く存在するわけですよ。仕方ないんですよ。同じ職場に女性がいるって言ってもAさんとAAさんなんですから。そりゃ、人妻のワガママボディに走っちゃうのも頷けるんですよ。

で、まあ彼が攻められる原因となっている文字化けメールなんですがね。いやもう信じがたいことにうちの会社仮にもIT通信業でPCで商売している会社なんですけども、あまりにもPCの知識がないヤツが多すぎる。文系三流大学出た豊さんでさえ一目見てただのエンコードミスでウイルスなんかじゃ断じてないってことはわかります。君達ホントに大学出たのか。

AさんとAAさんが、どこぞのSMクラブの女王様かってぐらいにU君を攻め続ける姿を堪能してても良かったんですけども、流石に女王様というにはやや顔がアレでして。さらに言うと女王様ってスタイル大事じゃないですか。性格とかは高飛車とか、姉御肌とかがピッタリはまるっちゃはまるんですけど、別にそれがお兄ちゃん想いの妹とかでもいいわけですよ。それはそれでありだと。むしろそれでお願いします。

それでまあU君の欲求も分かるんですが、ほら、豊さん女性の味方じゃないですか。職場でそういういかがわしいサイトを見るのはいかがなものなんでしょうということで、別に助け舟出さなかったんですよ。その光景を見ない限りはアレな感じの女王様を見ることもないわけですし。

そ知らぬ顔で自分のPCへ戻るんですが、流石に後ろに人がいますし、エロサイト巡回はまずかろうということで真面目に仕事を。

……おかしい。

何がおかしいってまずコマンドプロンプトが開かない。さらに言えばウイルスバスターが死んでいる。コンソールを開こうにも反応しない。

次の瞬間、豊さんの脳裏にかつての古い記憶がよみがえった。

あれは数年前の秋。豊さんのPCはエロ画像エロゲにエロ漫画にエロ動画と、エロと名の付くものの巣窟となっていた。エロがエロを呼び、最早時代が時代なら永久封印されてもおかしくない危険物と化していたのだ。おそらく中学生ぐらいが触ろうものなら、彼の今後の人生に多大なる影響を与えること必死な代物だった。日々進化を遂げるそのハードディスクには、この豊さんが、あの豊さんが自信を持ってススメることの出来る珠玉の一品たちが眠っていたのだ。

だが、そのエロ達は突如として姿を消した。愛娘が「お父さんなんか嫌い!」と言って家を出て行くが如く、突如としてその姿を消したのだ。

豊さんは焦った。何日も、何日も血眼になって探した。だが、娘は帰ってくることはなかった。せめて、せめて幸せに暮らしていてくれれば、それで構わない…!

やがて豊さんは風の噂で知る。娘達は、ヤツらに連れ去られたのだ。

そう、ウイルスだった。

豊さんは怒った。怒りに身を震わせ、矢のやうに走った。四肢が千切れても、力の限り。痛みが意識を刈り取ろうとも、獅子のやうに叫んだ。

「娘達を返せ」と。

が、豊さんは弱かった。人一人の力では、出来ることなどたかが知れていた。豊さんに出来ることなんて、ヤツらに見つかっていない娘達を人知れず名も知らぬ土地へ逃がすことだけだった。

泣く泣く娘達を諦めた日々。その苦い苦い記憶が蘇ってきたのだ。

何故諦めたのか。あそこで戦っていれば何かが変わっていたのではないのか。そんな簡単に諦められるようなものだったのか。一度は冷えてしまったそのパトスが、豊さんの中にふつふつと湧き上がるの感じた。

目を開け、目の前のPCを睨みつける。いいだろう。ここで会ったのもまた運命だ。今度こそ貴様を消し去ってやる! 豊さんを昔の豊さんと思うなよ!

おもむろにPCの電源を切り、倉庫へ走ります。仕事のデータはどうせサーバーにバックアップがある。お気に入りのアドレスが消えるのは癪だが、今は娘達の復讐が最優先だ。

倉庫の保管庫の扉を開け放ち、目当てのブツを物色します。まるで標本のように整然と整理された中にあったそれを手に取り、鍵もかけずに走り出します。これさえあれば。これさえあればヤツを殺せる!

自分の席にとって返した豊さんは、ケースを開けるのももどかしくそのブツを娘の仇が宿ったPCに飲み込ませます。さぁ。楽しいショーの始まりだぜ!

はやる気持ちを抑えながら、ボタンを操作します。

「喰らえぇえええええええ! 娘達の仇イイイイイイイイイイイッ!」

ヤツは、ガリガリという耳障りな音を立ててその姿を消していきました。

これを読んでいる聡明な読者諸君はお気づきであろう。そんなことをしても、娘達は帰ってこない。ヤツにやられた者たちは、二度と帰っては来ない。復讐なんか無意味だ、また新たな憎しみを生むだけだと。

そんなことは豊さんとて分かっています。かの名作「もののけ姫」でも同じようなことを言っていました。ですが、豊さんが言いたいことはそういうことではないのです。復讐はおろかなことだ、それは間違いない。だが、それ以上におろかなのは、ヤツと初めてあった時の豊さんの行動です。

あの時、勇気を持って行動すれば、あの娘達は助かったかもしれない。それを豊さんは、まだ無事な娘達を逃がすのに必死になって、見向きもしなかった。それが、今の今まで心の奥に刺さった棘として豊さんを苦しめていた。

いや、苦しむことはさして問題ではない。それは豊さんに許された唯一の罪滅ぼしだったからだ。だが、それは真の罪滅ぼしではない。出来ることなら、あの時立ち向かうべきだったのだ。

確かに生きながらえる娘達を保護するのも大事であろう。だが、その後豊さんは、愚かにも連れ去られた娘達を諦めた。これがどれだけ愚かなことか。悔やんでも悔やみきれない。復讐を果たした今となっても、寂寥とする思いがこの胸を支配している。

愚かなことだ。人は失敗することでしか学ぶ事が出来ない。それを歯がゆくも思う。だが、それもまた人なのだ。

人でなければ、あの娘達を助けてやることも出来なかった。

胸のわだかまりとともに、豊さんは暖かな思いを感じていた―――。

職場にいたとしても、これだけのドラマを感じることが出来る。華々しさはないかもしれない。滝のように流れ落ちる涙もないかもしれない。

だがあえて言おう。

職場には、それぞれのドラマがある。




…ああ。そうそう。結局ね、豊さんのPCがマジモンのウイルスに感染してて、証拠隠滅を図ったって話なんですけど。ロリータ天国とかいうサイトで感染したっぽいのですよ。まあ昔の話なので、気をつけるもクソもないのですが、職場で慌ててプリインストールを敢行したくなければ、迂闊な行動は慎んだほうがいいと思います! でも抑えられない欲求ってやっぱりあるよね!

以上。
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コメント

No title

長文おつかれ。
早い話がもやし君はういるすでないのに慌ててるところをプギャーと
ほくそ笑んでいたら自分がひっかかっていた、と。

まぁあれだ。俺が言うのもなんだが。仕事しろw

幸運なことにいやーんなサイトみたりしても未だういるすにはかかったことないなあ。
だが想像するだけでも恐ろしい。。。
あと娘じゃなく、嫁じゃないのか?それとも属性的に娘ばっかりなのか。
そこんとこどうなのよ。

No title

仕事? ちゃんとしてるじゃないか…人聞きの悪いw

>それとも属性的に娘ばっかりなのか。
わかってるじゃないか。その通りだよワトソン君。

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